1950年から1970年くらいのアメリカのモダンジャズのアルバムを聴こうと思ったとする。

イントロ。
かっこいい。
ハーモニーも旋律もリズムもビシっときまってる。
ジャズっていいな
と素直に思える。

譜面通りのイントロ(テーマ)が終わり
管楽器やピアノやベース・ドラム等のソロ回しの時間になると
なんとも退屈な雰囲気が続いて、次の曲に飛ばそうと思う。
さあソロ合戦を聴くべし
という時間が苦痛なのだ。
曲を変えたとて結局どの曲も同じ構成で
6年くらいそのアルバムは再生しなくなる。

6年が経ち、楽しんで聴けるかどうかまたチャレンジしてみる。
でも同じ。
どうしてもソロ回しの時間が音楽的に不毛に感じられてしまう。
その時代にその場で生で聴いているならエキサイティングかもしれない。
又はアナログレコードで
極上のスピーカーシステムで
爆音リスニングすれば感動するかもしれない。

でもそうではないから。 

もし
全てのバッキング部が
もっと音楽的にアレンジされているか
アレンジされたかのようなバッキングだったりで
器として面白い形をしていたら
ソロ演奏者の演奏の粋さや上手さを
素直に堪能できるだろうと思う。

こう弾いときゃいいでしょ的なウォーキングベースのラインが
その曲ならではの個性を消す役割があるかのように感じて
未来の音楽ファンの私にはつまらない。 

伴奏がつまらなくても
例えば2管で同じ線や違う線で旋律が絡まるのなら
その様子そのものが
音が重なる楽しさの本質に近いから充分に
エキサイティングだ
しかし所謂"モロジャズ"では基本一人ずつソロはまわされる。 
そういう形式でない録音を知らないだけかもしれないし
ちゃんと聴けてないだけかもしれないが
そこを売りにしてたようなものは少数だといっていいと思う。

そんな調子でジャズに分不相応なPOP性を求めると
聴けるものは限られてきてしまう。
そういう風に聴くべきものではないみたい。 


私がジャズの偉人であるセロニアス・モンクの音楽を聴き始めたのは
19歳の頃。
住んでいたアパートの近所の図書館で
たまたまThe London Collectionというアルバムをかりた。
そのアルバムが気に入って一つの季節中
The London Collectionを録音したテープをよく聴いた。
全然飽きなかった。

その後、沢山のジャズアルバムをかりたり買ったりして聴こうとしたが
若いうちからちゃんと本心から気に入ってのめりこめたのは
モンクとローランド・カークとダラー・ブランド(アブドゥラ・イブラヒム)くらい。
その3人の音楽の存在感は
ジャズというよりもポピュラーミュージックに近接している。
口笛で吹きたくなる人懐っこいメロディ。
ジャズの中でも彼らの音楽しか好んでない場合
ジャズが好きとはちょっと言い難いものがある。


1971年作
The London Collectionはモンクのアルバムキャリアの中では最後のスタジオ録音
今日(2016年1月8日)は久しぶりに
YouTubeでではあるけど
The London Collectionをずっと流してた。
25年前と変わらず飽きない。
このまま春までエンドレスリピートでもいいかもしれないくらい。
なぜだろうか。
モンクのアルバムでも他のアルバムなら何度もリピートしたいとは思わない。
同じピアノソロのアルバム
セロニアス・ヒムセルフや
アローン・イン・サンフランシスコや
ソロ・モンクとは
なにかがちがう。 

・スイング感や即興フレーズが希薄
・テンポが湯にのぼせてるかのようにのんびり
・スタジオの部屋鳴りの反響具合がキラキラしていて他の録音にはないステレオ感

という要素がある
から延々聴けるのか?

スピード感に欠け
インプロの飛躍の面白みが薄いからイイ だなんて
まるで 
ジャズ的じゃないから好き 
って言ってるも同然だ。

そうなのかもしれない。

インプロに興味がないことを恥じるのはナンセンスだ。
ジャズだから高度と捉えることもナンセンス。
摂取したいのは純度の高いメロディやハーモニーやリズム
そして自由なフィーリング。
インプロヴィゼーションは自由の象徴なようでいて
実際は閃きとはほど遠く
不自由感を感じることの方が多い。
聴きたくないなら無理に聴くこともない。 


ジャズという括りなんて意味もなくなるくらいの
ジャズコンポーザーとしてのプライドとは無縁の
さりげなく誰かが鼻歌で唄ってるフォークミュージック
くらいな温度な演奏のこの録音を
私はただただ心地よく聴いている。

まちがえてるところもわかる。
迷いを感じてるのかなって箇所もある。
その等身大の空気がとても落ち着く。
気まま万歳。

ジャズだろうが
ジャズでなかろうが
ジャズ的だろうが
ジャズ的でなかろうが
音楽を心底心地よく感じられることそのものが
至福なように感じる。



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そして
そんなジャズなのかなんなのかわからないような音楽の作り手・鳴らし手の主であるモンクが
1940年代のジャズのビーバップ革命の中心人物の1人として認知もされ
20世紀のジャズ界の誰よりも独特な曲を沢山産み
それがしっかりと歴史にも刻まれ
正統に評価されていることの奇跡がまた味わい深いのだが
レコードの音はあくまでその事実とは無関係に
のほほんとした軽い響きであること

それがたまらなく素敵だ。