プリンスのmixtapeをMixcloudに公開した。
vol.1は、サイケ&ビューティというテーマで編んだ。
プリンスの音楽において「サイケ感」と「官能」は同義。

プリンスにはどんなことも音に現すことが出来る才能がある。
1面だけに特化した才能の持ち主なら他にも沢山いるが、プリンスは何でもできる多面体で、面が多すぎて丸いクリスタルボールに見えてしまうくらいなソレだろう。
音楽を形にすることに必要な全てが備わっている。
たまたま20世紀のターニングポイントに黒人として生まれ、JB、スライ、Pファンクらのファンク道とジョニ・ミッチェル、スティービー・ワンダーらのプログレッシブ開拓道?を引き継いでいるからこそなポップな形を装っているが、能力的にはどの時代のどんな境遇に産まれていたとしても時代を変えうる音楽力を大きく発揮しただろうことを疑えない。

プリンスの音楽は初期の段階から性愛が音に表現されている。

リズミックな音楽というのはそもそも性的なもので、音楽を演奏することも、音楽を聴いて踊ることも、超・性的で官能的なことだ。
音楽を求める心と性を求める心は近接していて、エロさのない音楽ほどつまらない(と言ってしまってもいいかもしれない)。
80年代プリンスミュージックの最も個性が突出した部分は、レベルの高い性技の具体的な音像化のような印象を与えるサイケなチョメチョメ感が溢れかえっている点じゃないだろうか。
とにかく細かなアレンジの一つ一つやコードの流れ方やサウンドの作られ方の意図の全て が聴く者の「官能」を引き出す妖しい即効薬になっている。
プリンスのエロさ自体は非凡なものではないのかもしれないが、音楽化させた「エロスにまつわる諸々の感覚描写」を売りに出来てしまったところは本当に他に例がなく特異なことだと思う。
一般的にエロいエロいと賞賛されてるような音楽は単にムーディだったりグルーヴィーだったりしてるだけなことが多い気がするところ、プリンスはまじで音でイカせにかかってくる。
”そんな音色鳴らされたらおかしくなっちゃう... そんな妖しく意外性に富んだコードの流れを展開されたらおかしくなっちゃう...” 
ような音 というよりもむしろ、例えば女性が性的に感じている時のその「おかしくなっちゃってる」脳の感覚そのものが音で多彩に表現されている。
女性が官能を感じる機微を様々な手法で音楽化してるところが凄い。
もちろん男性にも女性性は個人差はあれど確実にあるので男も女に共鳴して、男も女も両性的な感覚で、男としても女としても楽しめるという、倒錯しているようで実はいたって普遍的なエンタメを世界規模で露出してしまった...
と言えないか?
プリンス自身も自曲の中で男でもあり女でもあり、聴く者の誰もも女でもあれて男でもあれる。。 
他にそんな音楽があるか? 思いつかない。
音の主が両性具有的なのではなく、音楽の構成要素自体が 両性具有的。

性別を越えて両性を含んでいることと同様に、ジャンルも越え全音楽を含んでいる感覚をプリンスの音楽には感じる。各音楽のつまらない部分がスルーされ、性的に役に立つ旨味成分だけで美しく建てられた音楽建造物。
こんなにいかがわしい音楽なのに人類の産み出した音楽の中でもトップクラスの美しさがあるということ。プリンスの肉体は突然消えてしまったけども、その正当な評価は今後拍車がかかって高まっていくだろう。

プリンスの音楽におけるチョメチョメ感のあるハーモニー、旋律、メロディ、コード、リズムのキメ、等の音楽要素は、ジャズ的な耳で聴いても近・現代音楽的な耳で聴いても、極めて"美味しい”ということはとても重要だと思う。
プリンスの菅楽器アレンジの、どんなジャズやクラシックの鬼才と比較しても勝つことさえあれど決して負けないくらいの高度さをみんな薄々感じてるでしょう?
ロックミュージシャンならプリンスのギターソロの超絶な的確さに言葉を失うし、
歌手ならプリンスの喉が表現している広い領域に自信を失う。
実際、マエストロプリンスの指揮する全要素が超絶的なのだから「プリンス」とはよく言ったものだ。
分相応な高貴さが備わっている。
『音楽に出来ること』の領域を他の誰よりもプリンスは理解している。 
人間の興奮や律動のメカニズムの実際的なドクターであり、音楽の神のようなものに一生守られた奇跡的存在だった。
過去のリスナーも未来のリスナーも、彼が産み出した音楽をこれからも祝福したいだけ祝福することができる。 

官能の桃源郷はかくも美しい。
vol.1はそれを証明できたら という感じでミックスしたが、流れを重視したらさほど官能ずくしでもない出来となったが、作ってから何度も自分で聴けてるから結構いい出来なんじゃないか。

プリンスmix vol.2
は、ライブ音源からと正規アルバムに収録されていない曲から、自分向けに作った。
 私のプリンスへの興味には偏りがある故に主に85年から88年頃の音。
後半のレア部の曲達はプリンスが死去してから知った曲ばかり。
80年代の曲の吸引力は未発表曲でももの凄い。
(この時期のプリンスの尋常でないクリエイティブさに触れて、エッセンスを吸収して見習い、みんな個々にいい仕事をしよう!)


mix vol.3
は、ソフトでアコースティックでキュートなプリンス特集。
音源は『The Truth (The Acoustic Album)』からの曲を軸にしていてやはり偏ってるけど自分が愛聴できるように編集している。
プリンスの魅力の中でも認知度が低い側面かもしれないが、その意外さとセラピー的素晴しさを味わってもらえたら。


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