<でたらめ音楽教室個人授業>という個人授業を私は時折やっている。

内容は様々で、生徒さんの求めてることによって全然ちがう講義をする。

先日のでたらめ音楽教室個人授業の生徒Tさん(約60歳)は言った。


「俺くれーな歳んなるとよー、みんな新しいことしたがらねぇーんだけど俺は逆なんだよ。新しい楽器使ってよ、メッチャクチャをしてーんだ。やりたいことはまだ沢山あんだけど、順序があるからよ。まずはスッパさんに教わりながらRolandだよ。」


「糖尿病んなっちまったし、もう元気でいられる時間はたいしてねーからさ。その前に目一杯自由に音で遊びてーんだよ。みんな呆気にとられると思うよ。でも、こんなじじーがいてもいんじゃねーかと思う。決まり切った音楽が嫌いでよー、もうホントにメッチャクチャをやりたいんだ。好き勝手さー。」


Tさんは携帯電話もパソコンも持ってなくて、他県の山奥で猫6匹と暮らしていて、音を鳴らせるモノも一切持ってない。

Tさんには中古のRoland MC303とシンセモニターやケーブル類購入のアドバイスしながらの付き添いとレクチャーするという内容の<でたらめ音楽教室個人授業>だった。4月18日には自らの企画イベントででたらめなライブをするらしい。


楽器屋さんでKORGの4万するシンセを悪戯な顔でメタクタに試奏するTさんはとても愛らしくもカッコ良く、出した音も素晴らしくて、Roland MC303より絶対KORGの方が自由に演奏できると確信しましたが予算オーバーだし、電子スッパライブのMC303の音に感動しての指名だったから胸に止めた。


Tさんへの授業の翌日に私は、MC303の後継機種(といってもどちらも90年代のオールインワンシンセ)であるMC505を使ったライブをする予定があった。

MC505でのライブは毎回が即興演奏ではあるのだが、いつもそれなりにかつて試して面白かった手法を忙しく駆使しようとしてしまう。いいところを見せようとしてしまう。エンターテイメントとしては何も悪いことではないのだが、私は本来、その場で新しいやり方を発見していきたい タイプなので、いいところを見せようとしてる時には自分に負けた気分になってしまってライブ後の反省も長引き、スカッとできない。
Tさんのピュアな姿勢に圧倒的な正しさを見た私はきちんとそれを反映させたライブがしたかった。しかし、初心に還るというのは口で言う程簡単ではない。工夫が必要だ。
笑点のテーマで ♬ぱっぱぱぱらりら、ぱっぱ♬ の後に " ぱふっ!" って鳴るあの楽器を今日は手元に置き、演奏中強迫観念的な動作に自分で気付いた時にぱふぱふ鳴らして自分に警告する、とMCで前説した上で実際その通りにした。
結果は上々で、ユーモラスな形で不自由さを度々軌道修正できて、それがお客さんにはドキュメントとしても楽しめたという。。
非常にスカッとする面白い演奏ができたのはTさんのおかげだ。
Tさんありがとう。